アレクサンダー(三十路後半)×クーカヅの息子(高校卒業した)です。
はじめはただのベイビーだったのにいつの間にか育っていた。
初めて好きだと思ったのはいつだったのだろう。
生まれた時からずっとそばにいてくれた大人に恋をした。それが恋だと知ったのは、いつのことだっただろう。
ゆっくりと覆い被さってくるアレクサンダーは、よく知っているひとなのに、知らない男の目をしていた。紫色の中に灯る確かな情欲。異国の血を感じさせる彫りの深い顔立ちに笑みを浮かべているくせに、今にも噛みつきそうな気配を隠している。
「約束は覚えてるな」
ばさりとVネックのシャツを脱ぎ捨てたアレクサンダーの胸が重なる。ブレザーはすでにベッドの下で、ワイシャツ越しにもはっきりと鍛え上げられた肉体を感じる。温かくて、意外と柔らかい。抱きつくと、いつだって力強い言葉腕で抱きしめ返してくれた。
「やだったり、痛かったらちゃんと言う」
「そうだ。お前のことはだいたいわかるつもりだが、わかんねえこともあるからよ」
なんといっても、物心つく前から面倒を見てもらって、散々遊んでもらったのだ。力加減だって絶妙で、アレクサンダーに痛いことをされた覚えは一度もない。唯一、この間、初めて尻に指を入れられたくらいだ。それだってすぐに気持ちよくなってしまった。
その時、初めて勃起したアレクサンダーのペニスを見て、情けないことに怯んでしまったのを悟られて、それから何度か裸でくっついて途中までして――でも、最後までできなくて、カヅキに相談した。抱かれるのって、どうすればいいんだろう。
そこで、アレクサンダーがずっと待ってくれていたことを知った。告白した日から、実に二年。気持ちが変わることがあればすぐに手放すつもりだと、しかし変わらなければ受け入れると言っていたと聞いて、心は決まった。そうやって待っていてくれたアレクサンダーが、抱きたいと思ってくれているなら、応えなくて何が男だ。
「大丈夫、もう怖くないから、その、よろしくお願いしま、す?」
「なんだそりゃ。……あーしかし、なんだ、……やっと抱けるな」
ぎゅうと太い首筋にしがみつくと、かすかな笑い声が聞こえて、それから。甘く、かすれた言葉が、鼓膜を震わせた。そうだ、これからやっとアレクサンダーに抱かれる。アレクサンダーのものになる。
「待たせてごめん……」
「俺が決めたことだ」
気にするなとばかりに額や頬にキスが落とされる。単純な体はそれだけで熱が集まり始めてしまうから、密着したアレクサンダーにもすぐわかってしまったのだろう。太腿でごり、と押し上げられたらひとたまりもなかった。
「――っ!」
全身を震えが駆け巡った。大きな口に声は塞がれ、すぐに肉厚の舌に絡め取られる。鼻で息をすると教わったのに、いまだにちゃんとできなくて、すぐに苦しくなってしまって、頭がぼんやりする。力が抜けて、反比例するように触れているところからどんどん熱がともっていくようだ。
キスの終わり、揺れてしまっていた腰に硬いものが当たって、アレクサンダーが一瞬息をのんだ。ジーンズの中で頭を擡げようとしているそれは、力強い雄であり、これから受け入れようとしているものそのものである。色も形も大きさも、知っているものとは段違いで、恐怖を覚えてからも日が浅い。しかし今はそれ以上に、感じるものがある。
「アレク……」
「なんだ」
「なめたい、アレクの……だめ?」
「……無理してねえな?」
してない、したい。告げればアレクサンダーは笑みを深め、シャツの下に忍び込ませていた手のひらを引っこ抜き、あっという間に服を全て剥ぎ取ったのだった。
所謂、シックスナインというやつだ。ひっくり返されて、アレクサンダーの上にうつ伏せになって、眼前にはベルトだけ緩めたアレクサンダーの股間だ。窮屈そうに小山になっているそれをそっと撫でたら、アレクサンダーの目の前に晒した剥き出しの尻をぱちんと叩かれた。恥ずかしいと言えば、赤ん坊の頃から何度見たかわかんねえよと笑われる。そういう話をしてるんじゃないのに。
「とりあえず、好きにしてみろ。うまくなくたって構わねえよ」
「う――うん、」
恐る恐る取り出したペニスは重く、しっとりと手の中で息衝いていた――。